病家須知

前回に引き続き、江戸時代の養生を調べていたら、「病家須知(”病人を看病する家族がすべからく知っておくべきこと”という意味)」に辿り着きました。
人々が日常生活の中で気をつけることとして、姿勢や呼吸、休息(睡眠など)や食事、心理などに留意した日常の過ごし方、日頃の心得などが詳細に記されています。
そのひとつに、仰向けに寝て全身脱力して行う呼吸法・マッサージ法の紹介があります。江戸時代版自律神経訓練法のようです。

おへその下にある丹田の空気を入れ替えるイメージで深く呼吸することを促していますが、今で言うところのドローインでしょうか。腹腔にある乳糜槽に働きかけてリンパの流れを促進したり、横隔膜を鍛えて逆流性食道炎を予防したり、体幹を丈夫にし腰痛防止にも効果があります。
マッサージも胸の両側から下腹部、鼠径部から太ももの外側・内側に行う、足の母趾を揺り動かすなど、血流やリンパの流れを促すセルフマッサージです。

どのくらいの時間かけてマッサージするかは、万葉集の「いほ原の 清見の崎の 三保の浦の ゆたけき見つつ物思ひもなし」を唱える回数でカウントすることになっています。
勿論、呼吸を止めないように適度に吐くことを自然に促されるでしょうし、”豊かな景色を見ていれば、不安や思い悩むこともなくなる”と言い聞かせながら、情景を思い浮かべて心を落ち着かせることも目的だったのかもしれません。

盛り沢山でお得感満載のセルフケアが、江戸時代から行われていたことを知らなかったのは、大損してきた気分です。

コロナのお陰で、しばらく温故知新期間が続きそうです。

#マッサージ
#養生