腑に落ちないお話

先日、少しモヤモヤする体験をしました。

医療に関する広告は、ご利用頂く患者さん等の保護のためという目的で、以下の観点から記載内容に沢山の制限があります。
1)医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は他の分野に比べ著しいこと。
2)医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受けてはその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。
つまりご利用頂く方の医療に関する適切な選択を阻害する恐れを避けることが課せられているのです(「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」より)。
あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師、柔道整復師は、医業類似行為にあたるので、上記指針の対象とはならず「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」の対象となりますが、以下の記述以外の広告は認められていません(現時点ではインターネットは対象外とされています)。
1.施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
2.第一条に規定する業務の種類
3.施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
4.施術日又は施術時間
5.その他厚生労働大臣が指定する事項
上記の内容については、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項を記載することは認められていません。
患者さんは限られた情報の範囲で、医療や医業類似行為のサービスを選択頂くことになっています。

先日、マッサージを活用したアイデアが浮かび、とあるクラウドファンディングに相談をしてみました。
担当者の方からの「国家資格を持ってられますか?」という最初の問いに、「はい」と答えると、「国家資格者は、法律で広告制限があってそちらに抵触するので、クラウドファンディングのご利用は難しいです」との回答でした。
広告にあたる内容のアイデアではなかったので説明をしたのですが、
「そういう活動をされているということが事業の宣伝に当たる可能性もありますので、難しいです。
国家資格を持っておられないリラクゼーションや整体、エステティック、カイロプラクティック等の方でしたら、ご利用頂けるのですが…。」
安全なマッサージの提供ができると国が認めた資格を取得したはずなのに…と耳を疑いました。
クラウドファンディングの担当者の方に訴えても仕方ないお話なので、5分程度で電話を終えました。

現在、無資格でマッサージ等を提供されている方については広告の制限はありません。
厚生労働省では現在、保険適用外施術に関する広告の規制が検討されているようですが(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会)、新型コロナ・ウィルス感染症の影響もあってか議論は2019年11月を以って中断されているようです。

私自身、医療者・医療類似行為を行う者であると同時に、それらを受ける立場でもあります。
「医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受けてはその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難である」にも関わらず、制限された情報の下で「医療に関する適切な選択」を求められていることに疑問を感じてしまいます。
自身を護るために、ヘルス・リテラシーを身につけることの重要性を改めて感じる出来事でした。

#医療広告

#ヘルスリテラシー