痔核(脱肛)の手術

歳を重ねる中で、身体が動く(耐えられる)うちに、心身や生活の小まめなセルフ・メンテナンスをしようと決意を固めました。新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言真っ只中にも関わらず、先日、長年連れ添って重症度4レベルに温めた?痔核(脱肛)の手術をしました。

「対象の内痔核を切開し、血管を取り去ると元どおり腸壁に収まって行きます。皆さん、術後3週間は後悔するが、結果的にやって良かったと仰いますよ」とドクターから説明を受け、複雑な気持ちになります。

2時間半に及ぶ手術前の検査や入院生活について説明の後、ドクターから「術前2週間はワクチン受ける予定はないですよね」と聞かれて、「手術の1週間前に2回目の新型コロナウィルス感染症のワクチン受ける予定ですが」とお伝えしたら、「えっ!インフルエンザの場合、2週間以内のワクチン接種は発熱の原因がワクチンに依るものか、手術に依るものかわからなくなるので、避けて頂いているんですが…。コロナについては、日本人データがないのでなんともいえないですね。アメリカでは2、3週間、イギリスでは副作用がないことを確認して3日間は手術適応外です。さて、どうされますか?」とのこと。
3回接種や1年毎の接種の必要性、変異株への有効性など、まだワクチンのデータ自体が発展途上なので、一か八かでイギリス式を選択して予定通りのスケジュールになりました。
入院に先立ってPCR検査を受ける際、麻酔科のドクターと「ワクチン後でPCR検査が陽性になったらどうするのか」という話題になり、「もしその場合は、今後の事例に使ってやってください」と談笑。結果は陰性で無事、入院に至りました。

朝9時前に入院手続きを行い、3泊4日お世話になる4人部屋にご案内頂きます。
感染症下なので、カーテンで覆われ、患者間で会話をするような雰囲気もなく、とても静かです。
術着に着替え、看護師さんにベッドで浣腸してもらって「5分我慢してから、トイレに行ってください。便の状態を教えてくださいね」と恐怖の宣告を受けます。間も無く、脳がリスク感知し、マネジメント発動。看護師さんに「えっと。5分間の我慢はトイレでもいいでしょうか」と半ば押し切る形で、トイレに直行。指令を果たし、10時には手術室に横たわっていました。

以前、経験した下駄骨折の手術の時も、全身麻酔でした。麻酔から覚めるプロセスが苦手です。
意識がモザイクのように遠退いて行ったかと思うと、間も無く、名前を連呼する声の中で「あ〜、これは夢だ。悪い夢だ。早く覚めてくれ〜!」と悶絶しながら、「ベッドも移りますよ〜」、「酸素マスクつけますよ〜」、「痛いですか〜?」などの声掛けに、辛うじてうなづいたり首を振ったり。
閉ざされた意識の中で、“例の覚醒”だと確信し、絶望感と共にうとうとと眠りにつきます。
3時間すれば、ほぼ意識も明瞭になり、翌朝までの点滴以外は解放されました。
しかし、それと同時に肛門が開きすぎないように柔らかで細い排便コントロールのため、下剤で調整し、排便後は穏やかなウォシュレットでの洗浄は勿論、携帯の簡易ウォシュレットに、水で希釈したポピヨード液で消毒し、ナプキン必携生活が始まります。
肛門から5cm程奥で動脈を縛ってるため、食物が引っかかったり、硬い便で糸が脱落して術後10日は大出血の可能性があるらしい…。
その夕ご飯から普通食が出ましたが、とにかく、ひたすら噛みます(苦笑)。
でもなかなか排便がない…。食べてないのもありますが、恐る恐るなので、全然力が入りません。
知り合いの看護師さんから「口を軽く開けて、ふーっとゆっくり腹式呼吸したらいいですよ」と暖かいお見舞いメールを頂いてから、身体の力が抜けてスムーズにコントロール出来るようになりました。

毎食後、ボルタレンを服用してたので、胃薬を飲んでいるとはいえ、唇が腫れ上がりました。
初日から、看護師さんから痛みを尋ねられ、「余りないです」と答えたら、「女性はやっぱり痛みに強いですね」と言われました。2日目のドクターの回診の際に、聞かれもしないのに「痛みはほぼないです」と伝えたら、「そらボルタレン飲んでますからね。昨日、切ってるんだから、痛くない訳ないですよ」と、流されました。
創部の診察で「翌日、これだけちゃんと吊り上げ固定出来ていれば、綺麗に治りますよ」と言われ、胸を撫で下ろします。

退院の朝、下剤とポピヨード液、鎮痛剤の追加分を頂いて、心に安寧が訪れます(苦笑)。
医薬品開発や調剤する立場でしたが、薬を使ってみる立場になると、その尊さがよくわかります。
退院しても、血圧が上がること(重たい荷物を急に持ち上げる等)、体温の上昇、心拍数の上昇、創部への負担(自転車)などはしばらく禁止です。
とはいえ、歩いたり、座ったりするだけでも、創部には負担になっていることを感じます。
排便の後は、たまに肛門の奥を絞り上げるような痛みがあります。我慢できないほどではないので、ウォシュレットなどで温めたり、しばらく横になっていれば緩やかになるものの、結構ストレスになります。
下剤を服用中なのもありますが、外痔核も切除したので、便意のコントロールが難しいため、早めにトイレに行く必要があります。長期休暇取っておいて良かったとしみじみ思います。
ポタポタ出血することも、多量の下痢便が出ることもありませんが、3週間はナプキンに出血やリンパ液が絶えません。
油断すると創部や周辺から悪臭や痒み、チクチク感が出てくるので、こまめにウォシュレットなどで清潔を心掛けます。
食事制限はアルコールや、刺激物、消化されにくい根菜類ぐらいですが、自ずと消化の良いものをよく噛むようになります。
「後悔期間3週間は長めに仰ってるんだろうな」と思っていましたが、確かにガッツリ違和感を伴います。
日本では肛門括約筋の機能温存を考慮した手術で、便失禁発症率は低いそうですが、再発も含め、少しドキドキです。

痔核は米国の調査では45〜65歳、裂肛は日本の調査では20〜40歳に多いとの報告があります*1
また日本人を対象とした調査報告では、自覚があっても医療機関や市販薬を利用しない理由として、症状が悪くない、恥ずかしい、診察が不安などの回答が上位を占めているようです*2
痔は食事や排泄、妊娠・出産の他、睡眠、喫煙、飲酒、就学・就労、ストレスなどの生活習慣や、体質的な要因で発症すると言われています*3
現在、痔の治療は、早期、軽症の場合は、日帰りで済むケースがあります。
今回の手術で、本当に早め、早めの小まめなセルフ・メンテナンスについて、更に決意を強くしました。

お酒を飲むと“五臓六腑に染み渡る“と言いますが、東洋医学では五臓は”肝心脾肺腎“といった実質・固形(細胞が詰まった)臓器です。それぞれの臓に、ペアとなる腑(管腔臓器)があります。
肝-胆、心-小腸、脾-胃、肺-大腸、腎-膀胱
呼吸器が余り強くない私。つまりペアとなっている“大腸”も弱いということになる訳です。

今回の経験を踏まえて、東洋・西洋医学の両方の視点から、痔についての一次予防やヘルスケアにも取り組んでいきたいと思います。

*1: 山名哲郎他. 肛門疾患の疫学. 成人病と生活習慣, 2016, 46(12), 1477-1480
*2: 小堀宅郎他. 痔疾および痔疾用医薬品に対する生活者の知識および意識の実態調査. 医療薬学, 2019, 45(2),106―114
*3: 梅枝覚他. 生活習慣と痔疾患. 成人病と生活習慣病, 2016,46(12), 1481-1487

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